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9月7日 第1回 事例研究 特別公開講座 上映会+ダイアローグ 映画『記憶との対話 ?マイノリマジョリテ?トラベル、10年目の検証?』

2019年09月30日活動報告

9月7日の午後から、特別公開講座 上映会+ダイアローグ 映画『記憶との対話 ?マイノリマジョリテ?トラベル、10年目の検証?』が開催されました。障がい者と健常者の境界線を探るドキュメンタリー映画である本作品の上映は、一般の参加者も多く、受講生を含めて約50人の方々が集まりました。
 
映画上映に伴い、講師として登壇されるのは本映画の監督?佐々木誠さん、マイノリマジョリテ?トラベル?クロニクル実行委員会代表の樅山(もみやま)智子さん、九州大学大学院芸術工学研究院助教の長津結一郎さんの3人。まずは長津さんから、映画上映にあたって障がい者と健常者の境界線とは何なのか、どのような問題があるのかを事前に知ってもらうため、「なくならない境界線、そこにある芸術」のレクチャーをしていただきました。長津さんはアート?マネジメントや芸術社会学をベースに、障がい者をはじめ多様な背景を持つ人々の表現活動について調査し続けている研究者です。


 
長津さんは「みんなが一つの輪になろうとしても必ず輪から出てしまう人がいる。『みんなで一緒に』と言いながら、誰かを必ず排除してしまうのです」と話します。境界線は決してなくならないものであり、越えられないもの。さらに、健常と障がいの境界線は、はっきりとあるわけではなく、グラデーションであるべきだと続けます。「障がい」は相対的なものなのです。例えば、車椅子に乗る人は階段を自力で登ることができません。では、その人を障がい者だと区別してしまっていいのでしょうか。長津さんは「その人が障がいを持っているのではなく、そこに階段がある状況を生み出している空間こそが障がいなのです」と話します。参加者は前のめりでお話を聞いていました。

次に、樅山さんからマイノリマジョリテ?トラベルの解説がありました。マイノリマジョリテ?トラベルとは樅山さんの呼びかけで2005年に立ち上がったアート?アクション?ユニット。身体の障がいや、性同一性障害、摂食障害、アルコール依存症、在日外国人、路上生活者など、さまざまな「マイノリティ性」を抱えた人を公募し、それぞれのアイデンティティが形作られた背景や空間を共有することで、「マイノリティ」と「マジョリティ」の境界線の移動を体験します。そのプロセスからパフォーマンス作品『ななつの大罪』を2006年に発表。2016年に完成した『記憶との対話 ?マイノリマジョリテ?トラベル、10年目の検証?』は、プロジェクト関係者の10年間の軌跡を辿り、現在の社会を考察するドキュメンタリー映画です。


 
樅山さんの解説後、いよいよ映画の上映に移ります。作品内、お互いに意見をぶつけ合い、それぞれのアイデンティティを確かめ合いながら一つのものをつくりあげる出演者たち。またそれを10年後の「現在」と照らし合わせながら、「境界線」について、問いかけられ、考えさせられる60分間となりました。



上映後、4?6人のグループに分かれてディスカッションを実施。「今日この場で考えたこと」「この経験から何がしたいのか、何ができるのか」の2点を話し合い、発表してもらいました。






 
「障がいとは何なのか、その答えがわかると思って来たのだが、逆に深まってしまった」
「出演しているのは“スーパー障がい者”と呼ばれる人たちだと思う。出演さえもできない、世の中から隠れてしまっている障がい者たちには目を向けなくて良いのか。作る側が『見たいもの』に寄せていってしまっている可能性を考慮しなければならない」
「言語化すること」や「芸術と福祉の境界線」、また「初めて会う人との丁寧なコミュニケーション」など、参加者からは様々な意見や感想が出ました。


 


また、佐々木監督へ「一度撮影したものを10年間も温めて、振り返りながら再撮影するなんて、とてもエネルギーのかかっている作品だと思う。そのエネルギーはどこからきているのか」との質問もありました。これに対して佐々木監督は、自分のエピソードを交えて答えます。


 
佐々木監督は作品で知り合った障がいを持つ人と、ご飯を食べに行くことがあるそうです。そのとき、障がい者でも入れる店を探したり、店内では障がい者がトイレに行くのを手伝ったりしています。この話を友人にすると、めんどくさくないのかと聞かれることがありました。「でも、その場に自分がいたらそうするだろう」と言うと、「するかもしれない。でも、そんな場所に自分から行ったりしない」と返ってきたのです。佐々木監督はこのとき、友人に強い境界線を感じたと言います。「障がいを持っていても、持っていなくても自分にないものを感じる人は魅力的です。単純に一緒にいるのが面白いんですよ」。
最後に、長津さんから受講生へのアドバイスをいただきました。「皆さんへの『この経験から何がしたいのか、何ができるのか』という問いは、とても困ったと思います。この作品のなかには、それぞれ心に引っかかった点があるはずです。では、なぜ自分はそこに引っかかったのかを丁寧に言葉にしてみてください。それが次のアクションにつながるヒントになります。自分の中に残ったモヤモヤの正体を考えてみてください」。受講生はその言葉を受け取り、今後の企画のためにまずは何をすべきなのかを改めて考える機会になりました。
 


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