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活動報告

10月18日 第3回 事例研究 「福祉?アート」

2020年10月30日活動報告

10月18日の午後からは、それぞれの個性を活かした工芸やアート作品、音楽活動が国内外で高く評価されている、鹿児島県にある知的障がい者支援施設「しょうぶ学園」の統括施設長 福森 伸さんによる特別講演「福祉×アート」を実施しました。鹿児島と会場をつないでのリモート実施となりましたが、質疑をはさんだ対話型の貴重で楽しい講演となりました。
 


福森さんのご両親が1973年に創設した「しょうぶ学園」。福森さんが1985年に工房しょうぶを設立してから、「芸術活動推進」「衣食住+コミュニケーション」「創造性と人間力」、約10年ごとにテーマを新たにしながら、「ささえあうくらし−自立支援事業」「つくりだすくらし−文化創造事業」「つながりあうくらし–地域交流事業」を実践しています。
 
工房を立ち上げたばかりの試行錯誤の頃は、当時は障がい者が健常者に近づくこと、できないことをできるようになることが良しとされていた時代であり、工房しょうぶでも決まった形どおりにものをつくること、刺繍をすることを教えようとしていました。しかし、木を削ることそのものに喜びを見出す姿、地の布が見えないほど何度も同じところを刺繍する姿を目にし、その人が望んでする行為や気の赴くままにつくるものの中に美しさを見出すようになったそうです。



また、同じ頃に松本民芸家具の池田三四郎さんと出会い、障がいのある人と何をつくればいいのかを相談した福森さんは、人間のやることの面白さや、人は興味が湧けば夢中になることに気付かされ、「何かを教えようとするのではなく、自分の感じたことをただ表現してもらえばいいのではないか」と思うようになります。これらの気づきが今日に続く「しょうぶ学園」の「ありのままであること」を尊重する活動へつながっていきました。



 「しょうぶ学園」の様子や、そこで生まれるもの、人と人との関係をより理解するために、学園の映像を鑑賞しました。



門扉のない開かれた入り口、手作りの大きな木のテーブルが置かれたお洒落なパスタ店、木につけた傷が味わい深い木工作品、何年もかけて生地が見えないほどに縫われている色彩豊かな刺繍作品、いろんな色の服を着た人が並ぶ幸福感が溢れるイラストや、筆で描かれた丸と線による芸術性を感じる絵画などのアート作品。そして、感じるままに創作活動をする人たちと、共に過ごす中で作品そのものと、その人がどのようにして作品を創り出しているのかに興味を深めていくスタッフ。

自分らしく生き生きと過ごす人たちの姿、人々が集う魅力的な場所に、鑑賞した受講生からは「訪ねてみたい」「商品や作品が欲しい」という声が上がりました。



大人になれば自分の感覚よりも情報から理解し、一般的にいいと言われるものを選ぶようになり、感じ方は鈍くなっていくとも言えますが、「彫りたいから彫る」「縫いたいから縫う」「描きたいように描く」自分の感覚に素直な人たちは人の影響を受けにくいという才能に恵まれている、自分の感性でありのまま表現する姿は表現者として尊敬できると福森さんは語ります。

工房で生まれるものは自由な表現をそのまま保存したアート作品、そしてそれらにスタッフの知恵や情報、工夫する力によってデザインや創作を加えたクラフトなどがあります。これについて福森さんは利用者とスタッフによるコラボレーション作品ではなく、両者の目的や意図するところの違いや特徴をマッチングさせて作り出された新たな創造物と説明しました。また出来上がった作品だけに価値があるのではなく、制作過程の行為そのものに価値があり、形にならないゴールのない作品もまた大切なものであると教えてくれました。
 


この日の福森さんのお話から伝わったことは、その人らしさやそれぞれのできることに目を向けることの大切さ。そこには優劣がなく、ただ違いがあり、それぞれにできることをすることで、何かが生まれるということ、そして違いがある中で気づかされることの豊かさでした。

受講生たちからは、福森さんが指揮をする「otto&orabu」の演奏についてや、地域とのつながりについてなど質問があり、音楽もクラフトと同じように枠の中でそれぞれの音を自由に奏で合っていること、地域にとって施設が必要であることを知ってもらおうという思いもあり、美味しいものや癒しがある誰でも訪れる場所としていて、実際に多くの人が訪れていることを教えてもらいました。

アートマネジメントを行う上だけでなく、自分自身の在り方を振り返り、これからの可能性を拡げられるような、新たな視点を得られる時間となったようです。

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